私が中学生くらい、すなわちJRではなくまだ国鉄だった頃、札幌あたりでも国鉄の列車のことは普通に『汽車』と呼んでいた。
列車だけではなく、駅や町の踏切なんかも汽車時代のままだった。人々は『汽車』に乗るとか『汽車』で来たと言っていた。
すでに本物の汽車は過去のものになっていたが、特急型車両以外はすべてボックスシートの並んだ旧型客車時代から大きく変わらない車両ばかりだったので、国鉄の列車と言えば昔から変わらずの『汽車』だったのである。
↑ 本物の汽車。倶知安駅で撮影。
それが変わったのが1988年の札幌駅高架化開業と721系電車の運転開始だろう。これらは今までの国鉄時代からの面目を一新した。人々はいつしかジェイアールのことを汽車とは呼ばなくなった。
また、年々激しくなるラッシュはデッキ付き2扉の車両では対応できなくなり、札幌からはだんだん追われていった。
かつては急行『かむい』として札幌−旭川間の主役でもあり、急行降板後も札幌都市圏電車の主役であったが、後年は岩見沢―旭川間や苫小牧―室蘭間で細々とローカル輸送をするだけになってしまった。
そんな711系電車も2015年3月14日のダイヤ改正でついに走らなくなる。いろいろ思い入れのある車両が無くなるのは寂しい。
北斗星の臨時化やトワイライトエクスプレスの廃止のほうが何かと話題になっているようだが、ひっそり消えて行く赤電車こと711系電車に最後に乗っておこうと出かけることにした。
数少なくなった最後の711系電車の運用はここを参考にさせてもらいました。
時刻表を見ながら作成したプランは以下の通り。
札幌 11:03発 − 岩見沢11:45着 3423M
岩見沢 12:30発 − 滝川13:11着 2175M(711系)
滝川 13:55発 − 岩見沢14:43着 926D
岩見沢 15:27発 − 旭川17:11着 2195M(711系)
旭川 17:38発 − 岩見沢19:17着 2254M(711系)
岩見沢 19:40発 − 札幌20:17着 3264M(快速いしかりライナー)
きっぷは滝川までは1日散歩きっぷを使用し、滝川から旭川までは普通乗車券を購入することにした。
それでは最後の『汽車』を堪能すべく2/22の日曜日、札幌駅へと向かった。
●札幌 11:03発 − 岩見沢11:45着 3423M
朝晩は711系電車も札幌駅に顔を出すが、日中は岩見沢まで行かなければならない。
手にした切符は『1日散歩きっぷ』。2260円で滝川までは何度も乗り降りできる。
まず乗るのは733型電車。最新型の電車で、快速『エアポート』や北海道新幹線が開業したら函館とのリレー列車『はこだてライナー』にも使用される3ドアオールロングシート車両である。
今でもじいさんばあさんクラスになるとJRのことを『汽車』と呼ぶ人もいるが、さすがにこれを『汽車』とは言わないな。
オールロングシートの車内。711系電車が全盛だった頃はまさか北海道でこんな電車が走るとは思わなかった。
さすがに最高速度120km/hの新型車両、各駅停車ながら42分で岩見沢に着いた。同じ区間を711系電車ならば48分かかる。
まず乗るのは岩見沢12:30発の滝川行。もう1本あとの11:40札幌発いしかりライナーでも間に合うのだが、私と同じような名残乗車客で混んでいるといけないから1本前の電車にしたのだ。
岩見沢駅舎。2000年の暮れに木造駅舎が消失してから長らくプレハブ駅舎だったが、2009年に今の駅舎になった。
再開発工事で殺風景になった岩見沢駅前。かつて『小もろ』や『天狗まんじゅう』のあった古いビルは壊され更地になっていた。
駅の東側は古いアーケード街がまだ残っている。シャッターばかり目立つが。
●岩見沢 12:30発 − 滝川13:11着 2175M
ここから12:30発滝川行の普通列車に乗る。
駅構内に停車している711系電車。さいしょこれが滝川行になるのかと思ったが違った。
7番ホームにはやっぱり鉄道ファンたちが来ていた。岩見沢―旭川間でもすでにほとんどの列車が721系電車に置き換えられていて、数少ない711系電車に乗りにやって来たのだ。
皆さんカメラだけは一眼レフのごついやつを持っている。
あまり一般の名残乗車客はいない。去年の江差線廃止時とは違うようだ。
別に路線が無くなるわけではないし、711系から721系に置き換えられるならば一般の乗客にとってはむしろ歓迎すべきことで、それほど関心のあることではないのかもしれない。
しばらくはコアなファンたちで賑わうが3/13までなので、それまで辛抱してください。
私もその一人ですが・・・
滝川行2175Mが入線する。名残乗車のファンたちが一斉にカメラを向ける。
茶色いボックスシートが並ぶ車内。昔は青いモケットだったが、国鉄末期頃に今の茶色に変えられた。
窓ガラスはホコリや水垢がこびりついて曇ってしまっている。
車内はボックスが全て埋まり、ロングシート部分にも何人かというほどの乗り。3月以降はもっと混むだろうか。
窓下のテーブル。急行型車両と同じタイプの物。その下には灰皿があったが全車禁煙の今は撤去されている。
美唄で地元客が結構降りて空ボックスも出てきた。
空知川を渡る。汚れた窓ガラス越しはかえって水彩画のような景色になった。
滝川に到着。とりあえずここが終点になる。
2/16から『さよなら711系』のヘッドマークが掲げられている。シールのようだが。
側面からみると典型的な国鉄型車両。いかにも『汽車』という感じがする。
モハ711-111の車番。
映画『鉄道員(ぽっぽや)』の美寄駅のロケ地となった滝川駅。
滝川駅で改札口を出る。駅前のかつて西友だったビルは廃墟ビルみたいになっていて侘しい駅前だ。
それでも滝川駅の乗客数はここ20年来変化していないようで、札幌都市圏以外はどこも鉄道利用者数が減る一方な中で、滝川駅は健闘している。『かよエール』の効果だろうか。
ちょうどスーパーカムイ24号札幌行が来たが、日曜なのに結構な人数の乗客が乗って行った。
待合室のキヨスクはシャッターが閉まって14:30まで昼休みと張り紙があった。立ち食いそば屋は営業している。今どき珍しく強気の営業スタイルの店だがそれはさておき。
ここから岩見沢に戻って、岩見沢から旭川行の711系電車にまた乗る予定だ。今持っている『1日散歩きっぷ』では滝川までしか乗車できないので、きっぷ売り場で滝川−旭川間の往復乗車券を買った。2140円。1日散歩きっぷと合わせて旭川まで4400円となる。札幌−旭川間を普通乗車券で買えば往復で4980円になるのでまあまあお得と言ったところか。
もっとも乗車券では岩見沢へ戻ることはできないが。
滝川駅の改札口。
●滝川 13:55発 − 岩見沢14:43着 926D
ここからはまた岩見沢に戻るためキハ40系気動車の客となる。
滝川始発の岩見沢行926Dはなんと1両だけ。
岩見沢行の列車は1両だけ。苫小牧運転所所属の車両で、車内の張り紙や案内表示は室蘭本線の物ばかりだった。それでも車掌が乗務していて、無人駅に停車するたびに車内を回る。
さっきの711系電車が折返せば良いような気もするが、わざわざ気動車を使うのはなぜなんだろう。
岩見沢の行先が掲げられた側面。
ボックス席はふさがっていたので車端のロングシートに陣取る。
同じ国鉄型でも711系のような格が感じないのはなぜなんだろう。
岩見沢駅ホームにある輓馬の木彫り。ばんえい競馬は岩見沢から撤退したが、ホームの像は健在。
さて、岩見沢に戻ってきてここから再び711系電車に乗ります。こんどはビールとつまみを仕入れに一旦改札を出ます。
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