ドナー峠を過ぎてからずっと森の中を走り続ける。標高が下がるにつれて森の中に人家が点在するようになり、集落や村も現れるようになった。
昨日からずっと無人の荒野みたいな所ばかりだったので、ようやく人里まで下りてきた感じがする。反面、景色は今までのような絶景は見られなくなった。
退屈してきたのでまたラウンジカーへ行った。賑やかだったラウンジカーもこの辺りまで来ると空席も目立って落ち着いている。
階下の売店でビールを買って飲んだ。
冷蔵庫から出したばかりのビールはキンキンに冷えていて、車内も冷房がガンガン効いているので飲んでるうちに寒気がしてきた。
ビールを飲みに行ったラウンジカー1Fのカフェ。さすがにもうがら空きだった。
1階席からの眺め。線路スレスレでやっぱり低い。
ローズビル近くになると都会らしさも見えてきた。
カリフォルニアゼファー号は通過するが、町ごとに駅が現れるようになった。
ローズビルには16:33に着いた。定時刻では12:57分なので約3時間半遅れとなる。少しずつ遅れも回復しつつあるようだ。
ローズビル駅。ここからは下車客がメインになる。
もう山岳区間は終わり。ここからはサクラメント平野を行く。
ここからはずっと郊外の住宅地が続く。一昨日のシカゴ以来の都会的な風景だ。
また、すれ違う列車も多くなった。と言ってもほとんどが貨物列車だが。
線路も直線になったようで、最高速度の130km/hで飛ばす。
サクラメント駅に到着。ここはカリフォルニア州の州都。
ローズビルを出て30分ほどでサクラメントに着いた。次第に停車する駅が増えてきた。
サクラメントは人口約40万人。カリフォルニア州の州都である。
日本のサクラとは何も関係ないが、漢字で書くと『桜府』と当て字される。
ここでまた10分停車となって、最後の気分転換タイムになる。
ここからオークランドやサンノゼまで『キャピタル・コリドー』号が4往復設定されている。
向かいのホームには列車を待つ人が大勢立っていた。ここもシカゴ以来の活気ある駅だった。
旅客用カートが走るサクラメント駅のホーム。
ホームで列車を待つ人々。サクラメントからは列車本数も増える。
サクラメントを過ぎるとまた畑作地帯となる。
カリフォルニア米の90%はここサクラメント平野で作付されているという。そのせいか、車窓もどことなく日本の平野の風景に似てきた。
遠くにサンフランシスコ湾の湾岸地域の工場や停泊する船が見えてくる。
おそらく最後の見どころカークィネス海峡を鉄橋で渡る。鉄橋は海面からずいぶん高いところを通るが、これは下を船が通るためだろう。
鉄橋を渡ってマーティネズ駅に着いた。18:16着、定時刻は15:26なので2時間50分遅れ。昨日の一番遅れていた時で4時間半近く遅れていたからずいぶんと回復した。もっとも、運行ダイヤは遅れを取り戻せるように、終点近くでかなり余裕を持って設定されているらしいが。
そろそろ部屋の荷物をまとめて下車できるように準備を始める。
カークィネス海峡の鉄橋が見えてきた。長さ約1700m。
サンフランシスコ湾を望む。隣はハイウェイの橋。
マーティネズ駅はベーカーズフィールドへの路線が分岐する。
マーティネズからはサンフランシスコ湾を右手に望む風光明媚な海岸沿いを行く。
今気づいたが、今までずっと右側通行だった複線の線路の、左側を列車は走っている。いつの間にか左側通行になったのだろうか。
道路は右側通行でも歴史的な経緯で鉄道は左側通行になっている国はいくつかあるが、サンフランシスコ近郊もそうなのだろうか。
海の向こうに傾いた西日が車内に差し込んできた。
マーティネズからはサンフランシスコ湾沿いを行く。
海の向こうに日が傾いてきた。
西日を浴びながら走る列車はカリフォルニアゼファーならぬカリフォルニアサンセット号といったところだ。
ちなみに『カリフォルニアゼファー』を訳すとカリフォルニアのそよ風という意味になる。
18:58に最後の停車駅リッチモンド駅に着いた。駅横には『バート』と呼ばれるサンフランシスコ近郊電車が見えた。ここからますます都会っぽくなる。
終点の1つ手前のリッチモンド駅。サンフランシスコ近郊路線であるバートの電車も見える。
リッチモンドから終点エメリービルまでは11分の距離。明るいうちに着けてやれやれだと思ったら、どこかの踏切手前で停止してしまった。
何だろうかと思っているとパトカーがやって来た。
踏切事故か?勘弁してくれよと思っているとしばらくしてまた動き出した。20分ほど停まっていたことになる。何だったんだろうか?
事故?終点を目前に踏切の手前で止まってしまった。
しばらく行くと終点のエメリービル駅のホームにゆっくりと進入した。
シカゴから2晩3日、3924kmもの距離を走破してアメリカ大陸を横断してきたので感動も覚えるが、終点のエメリービル駅は簡素な造りでいささか拍子抜けがする。
しかも、サンフランシスコまでは接続バスでのアクセスとなるので、地方空港に着いたような気分だった。
終点エメリービルに到着。堂々たる車体に狭いホーム。
エメリービルの駅名標。駅名の下に”サンフランシスコ接続”と書いてある。
終点で初めて対面した機関車。重連でシカゴから牽引してきた。
もともとカリフォルニアゼファー号はオークランド駅に発着していたが、1989年のサンフランシスコ地震で駅が崩壊したために、こちらのエメリービルに新しい駅が設けられた。
以降、このエメリービル駅がサンフランシスコ側のアムトラックのターミナル駅となった。
サンフランシスコ市内とは『サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ』を通る接続バスで連絡している。
エメリービルの駅舎。
エメリービル駅コンコース。シカゴ行カリフォルニアゼファー号の始発駅でもある。
終着駅の気分に浸る間もなくバスに乗り換えとなるので慌ただしい。
駅舎の外に出ると数台のバスが待機していた。
荷物は客席下のトランクに預けることになる。チケットを見せて荷物をキャリーバッグを預けてバスに乗り込む。
サンフランシスコへの接続バス。荷物はトランクへ預ける。
バスが発車すると外は次第に暗くなった。
バスは『サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ』を渡る。橋からはサンフランシスコの夜景がとてもきれいだった。
バスの車内。コーチ・寝台客の区別は無いようだ。
橋を渡ると、サンフランシスコ市内へと入る。フェリービルディングやフィッシャマンズワーフと停留所に停まって、乗客を降ろして行く。
今日泊まるホテルの最寄にあるショッピングセンターという停留所に着いたときはすでに夜の9時近くになっていた。
カリフォルニアゼファー号の車内で一緒だったSさんと、今朝の食堂車で一緒になった熊本の夫婦とここで別れる。
サンフランシスコ・ショッピングセンターバス停に到着。ダウンタウン中心部はここ。
降りたバス停から予約しているホテルまでは歩いて7〜8分のところだが、これがまたとんでもなくデンジャラスなところだった。
通りに面した店は全てシャッターが下りていて、道端には黒人たちがあちこちたむろしている。別に偏見は無いが、怖いものは怖い。
コンビニかドラッグストアくらいあるだろうと思っていたが、そんなものは見当たらない。
ひたすら早足で歩いてホテルの前に着いたら、ホームレスが毛布にくるまって横になっていた。
なんちゅー所なんだよ。
それでも無事ホテルに着いて、レセプションにいたおっさんに声をかけた。
インターネットで予約したときに印刷した紙を見せようとすると、時計を指差して何やら叫んだ。
予約時間に来なかったから今日は泊まれないとか、営業時間は終わったとか言うんじゃないだろうな。冗談じゃないぞ。
60年代アメリカ風のレトロなロビーだが・・・
おっさんは背を向けると食事を始めた。
またスーツケースを持った客が来て、おっさんは同じようにあしらって、引き返す人もいた。
ここで泊まれなかったら、表のホームレスと同じように野宿だよ。参ったな。
どうしたもんかと思っているとしばらくしておっさんに呼ばれた。宿帳を出してこれに書けと言う。
やれやれ、休憩で食事中だからしばらく待てと言っていたのか。
クレジットカードで支払いを済ませると部屋のキーをくれた。なんとか無事に泊まれるようだ。
これで宿泊代は2泊で232.5ドル。シカゴもそうだったが、ホテル代が思いのほか高い。
部屋も何となく60年代レトロ風。
1階のロビーは60年代の古き良き時代のレトロ風になっていたが、部屋のつくりもクラシカルだった。
クラシカルというより、ただボロいだけという感じがする。
初めての海外旅行だったらある意味面白がって泊まったかも知れない。
部屋は何だかわからないが、長年の体臭や色んなものが染み付いたようでクサい。
真ん中に鎮座するベッド。これもアメリカ風?
この時間でも営業している店は探せばあるかもしれないが、外に出てまたデンジャラスな通りを歩く気にはなれなかった。
この日の夕食はシカゴで買ったビーフジャーキーとスティックチーズ、それにナッツとスナック菓子のみ。乾物ばかりだ。
飲み物はウイスキーが底に少し残っている。あとは缶ビール1缶と、カリフォルニアゼファーのミネラルウォーター。
三食付き豪華寝台列車の旅はどこへやら、一転してひもじい夜になった。
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