【旅程】
シカゴ・ユニオン駅 14:00発 −(5列車カリフォルニアゼファー号)−翌々日16:10 エメリービル駅
カリフォルニアゼファー号はシカゴと西海岸のサンフランシスコを結ぶ大陸横断鉄道で、走行距離は3924kmあって、2晩走り続けて3日目の夕方にサンフランシスコに着く。正確には列車が運転されるのは20km手前のエメリービルという駅までで、そこからサンフランシスコ市内まではアムトラックのバスが連絡している。
シカゴから西海岸まで走っている列車は3本あって、以下の通りとなる。
・カリフォルニアゼファー号 シカゴ―エメリービル(サンフランシスコ) 3924km
・サウスウエストチーフ号 シカゴ―ロサンゼルス 3645km
・エンパイアビルダー号 シカゴ―ポートランド/シアトル 3631km/3550km
いずれも2晩3日かけて運転される長距離列車で、アメリカのアムトラックを代表する列車である。
一番長距離かつ長時間走る列車は今回乗るカリフォルニアゼファー号で、ロッキー山脈とシエラネバダ山脈2つの山越えなど見どころが多く、人気の高い列車となっている。
カリフォルニアゼファー号の時刻表パンフレットより。
カリフォルニアゼファー号のルート。
さて、いよいよアメリカ大陸横断鉄道旅行の始まりである。
鉄道旅行好きの私にとっては、いよいよ乗る時がやってきたと思うとゾクゾクした期待とも不安ともとれない気分になってきた。
ちなみに、これにシベリア鉄道それにオリエント急行を加えて三大いよいよ鉄道と言う(言わないか)。
寝台客専用のラウンジで待っていると何やら放送があって乗客がゾロゾロと動き始めた。生の英語など聞き取れるはずも無く、良くわからないが乗車開始かと思ってついて行くと、ホームに停まっていたのは『サウスウエストチーフ』号だった。違った。これはロサンゼルスに行く列車だ。
またラウンジに戻る。
それにしてもこちらのラウンジは案内表示が何も無く、係員の放送だけなので何の列車の乗車開始なのかさっぱりわからない。
不安ならば時刻と列車名の表示がある普通の待合室にいた方がいいかもしれない。
発車15分くらい前になって係員の案内がある。
サウスウエストチーフ号の乗客が去ってラウンジはだいぶ空席が目立つようになった。
14:35になってまた放送があり、乗客たちが出口に集まる。今度はカリフォルニアゼファーだろうと後について行った。
ラウンジを出たところは工場のような狭くて薄暗い通路を歩く。
これから長距離列車に乗るというのにあまりにも殺風景で、これから旅立つという雰囲気は全くない。
広大なホールに様々な列車が停まっているヨーロッパの駅とは大違いだ。
工場のような通路を歩く。
人々のあとをついて行くと26番線にやってきた。何も表示は無いが、停まっている列車はカリフォルニアゼファー号で間違いない。
狭いホームは乗客たちでごった返す。発車時刻まであまり時間は無く、慌ただしい。
最後部にはレトロで良い感じの客車が連結されていた。貸切車両だろうか。
2階建ての客車はデカい。
最後部にはレトロ風の客車が1両付いていた。中を覗くと食堂車のようだが、寝台車とは行き来できない。貸切の車両なのだろうか。良くわからないがとにかく自分の乗る号車番号の客車を探す。
レトロ車両を除いて後ろから2両目が自分の車両だった。入口に立つクルーにチケットを見せて車内に入る。
カリフォルニアゼファーが停まるホーム。
入口に立つ人は三日間世話してくれるスタッフ。
列車の設備や車内は事前にインターネットで調べてきたのでわかっているが、実物を見るとこれがアムトラックの寝台車かと感激する。
指定された個室は階段を登って2階の一番奥だった。
この列車の客室タイプはいくつかあって、今回乗るのは『スーパーライナー・ルーメット』という個室の寝台車。
個室には座席が向い合せにセットされていて、夜は座席を引き出してベッドにする。
これが3日間過ごす『スーパーライナー・ルーメット』の個室。
ベッドをセットすると部屋全体がベッドになってしまうので大型のスーツケースなどは置けない。
部屋は日本で言うとトワイライトエクスプレスのB個室シングルツインに似ている。
ベッドは2段になっているが、使用しないときは上段ベッドは畳んであるので、シングルツインのような狭い感じはしない。
窓は大きくて、2階席のため眺めは抜群だ。
アムトラックの寝台車はすべて個別の個室で、日本のような開放式寝台やヨーロッパのような雑居の個室というものは無い。座席車利用ならばかなりリーズナブルだが、寝台車利用になると値段がハネ上がる。
たとえば今回のチケットの場合、シカゴからサンフランシスコまで運賃が164ドルで寝台料金が735ドルの計899ドルとなる。
しかしこの部屋で2晩735ドルとは、と思いかけるが、もうそういうことは考えないことにする。
座るとこんな感じ。窓は大きく眺めは良さそうだ。
2階席から見たホーム。
部屋に荷物を置いたらまたホームに出て列車の編成を見てきたいところだが、もうそんな余裕はない。ラウンジで乗車案内があってからここまでずいぶん慌ただしく、寝台列車始発駅の旅情に浸る間もなかった。
ホームにいた人も全員乗車したようで、手荷物のカートだけがホームを走り回っている。
14:50になって発車するかと思ったが、なかなか動き出さない。14:58になって発車した。
ユニオン駅を発車する。しばらくは都会らしく多くの線路が交錯する。
真上から見たルーメット。
広げると大きい折り畳みテーブル。
部屋のロック。
天井の照明と空調。
読書灯と空調のツマミ。コンセントもある。
地下のシカゴ・ユニオン駅を発車すると地上に出て明るくなった。
個室は座って車窓を眺めているぶんには窓も大きく快適だ。
ずっと何本もの線路が平行して走る。線路の向こうは低い建物の街並みが続く。時どきポイントを通過して車体の下から線路が分岐したり合流したり交差したりジャンクションを通過する。
昨日乗ったハイワサ号もそうだったが、走行中は振動のような細かい揺れが続く。また、部屋が車端部なのでポイント通過時など揺さぶられるように強く揺れた。しかし、2階席のためか静か。たまに通過する駅のポイントのジョイント音がするくらい。
大きな肘掛のようなのは夜は上段ベッドの階段になる。
乗る前の興奮や不安はどこへやら。今はこうして個室寝台から流れる車窓を眺めている。
景色はずっとシカゴ郊外の低い街並みが続く。ときどき近郊列車であるメトラの駅があってホームを通過して行く。
ユニオン駅からここまで何だか流れ作業のように来てしまったので、どうも妙な違和感がある。
北海道弁で言うところの『あずましくない』というやつだ。
バッグから缶ビールを取り出して開けた。
昨夜の残りなのですっかりぬるくなっているが、口にしていると少し落ち着いた。昼食を食べていないので胃に染みわたる。
おつまみは駅の売店で買ったミックスナッツ。レーズンが混ざっているのが変わっている。日本ならば柿ピーだが、こちらはレーズンピーになるのか。これはこれでアリかと思ったが。
最初の停車駅ネイパービルには15:39に着いた。シカゴから41分距離は45kmになる。大型スーツケースを持った人たちが目立つ。ここから乗る人も多いようだ。この車両にも何人か乗ってきた。
シカゴを出て最初の停車駅、ネイパービル駅に到着。
駅の手前では一眼レフを構えた人も何人か見かけた。アメリカ人の撮り鉄?
とりあえず一息ついた。
ネイパービルを発車してしばらくするとドアがノックされた。車掌だろうか?
チケットを見せると何やら言われた。
悲しいかな、当方無学のため英語力ゼロ。生の英語など聞き取れるはずもない。
どうやら食堂車のクルーのようで、レストランとか、ディナーとかいう単語と腕時計を指差すのでディナーの予約のことらしい。
向こうの言うままにイエス、イエス言っていたら、1枚のカードをくれた。
クルーから渡された夕食の予約券。6:45からの第1グループ。
グループナンバーが1で、6:45と記入してある。夕食はこの券を持って食堂車にいけば良いようだ。
そのあと「ハロー」と女性のクルーがやってきた。
大声でノリノリな感じだ。
部屋のスイッチやベッドの説明など。
これも聞き取れるはずはないが、言わんとしていることはわかるので「イエス、イエス」とうなずく。
各部屋を一個ずつ同じように説明に回っていって、その度にノリノリの大声がするので、まだ回ってない部屋の客は何事かと思うだろうな。
シカゴの市街地を過ぎると大陸的な風景になる。
この部屋は進行左側にあって、また右側通行なのですれ違う列車を見ることができる。
シカゴに近いせいか列車とよくすれ違うが、全て貨物列車だ。
それもそのはずで、今走っている線路は自社路線ではなく貨物鉄道会社の線路を走っているのである。
日本では旅客鉄道会社の線路を借りて貨物鉄道会社の貨物列車が運行しているが、アメリカは逆で貨物鉄道会社の線路を借りて旅客列車が運行されている。
貨物列車の機関車。通過する駅は貨物駅ばかり。
すれ違う列車は貨物列車ばかり。
踏切を通過。
車窓はずっと畑作地帯が続く。コーン畑が多くてたまにジャガイモ畑が現れる。
広くて単調な景色だが、走行中の振動が激しいので意外とスピード感がある。
スマホのGPSスピードゲージで測定してみると130km/h前後で走行している。
ハイワサ号も同じ速度だったので、この速度がアムトラックの標準なのか。
コーン畑が続く。
ネイパービル〜プリンストン間の車窓から。
131km/hで走行中。
プリンストン着は16:52だった。時刻表通りならば15:44ということになっているが、シカゴの発車時刻が14:50に変更になっているので正確な時刻はもうわからない。
プリンストン駅。
次は車内を見て回って行きます。
【2014年アメリカ大陸横断鉄道旅行記の記事一覧】
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- 2014年アメリカ大陸横断鉄道旅行記18 マーケットストリートとミュニメトロ
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- 2014年アメリカ大陸横断鉄道旅行記16 サンフランシスコ ケーブルカーなど
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